INFO and designの近況

2013.01.04

はじめてのクッキー

Life

昨年の12月28日、私の携帯電話に一通のメールが来ました。
「今日は『八ヶ岳 母なる峰と神秘の森』の放送日で気が重いです」
クライアントでもある、テレビ番組の担当プロデューサーからのメールでした。
原因は八ヶ岳に棲む希少動物「ヤマネ」を撮影できなかったからとの事でした。
とにかく番組を観ないと。私は番組を観ました。

『八ヶ岳 母なる峰と神秘の森』は導入からスタートし、冬の樹林帯、苔の森、野口健の思い出、高山植物、ヤマネ、エンディングの流れになっていました。
気候の変化が激しく、山で暮らす写真家の西村さんでさえもヤマネを観測できなかった2013年。
ヤマネは元気に暮らしているのでしょうか...。
取材でヤマネをおさえるか、おさえられないかでエンディングが変わります。
ここがプロデューサーがドンヨリしていた理由の一つではないかと感じました。

正月休み最終日、私はプロデューサーを少しでも元気づけようとクッキーを焼きました。
表面には彼がディレクションした放送局のキャラクター『りんご丸』と、彼への応援メッセージをアイシングで描きました。
デコボコで不格好だけれど、麻雀と昼寝が趣味で怠け者の私が はじめて作ったクッキーでした。
なぜクッキーを作るほど彼が気がかりなのか。そこには公私を越えた "想い" があったからです。

以前勤めていた長野市のデザイン制作会社で入社2年目の事です。
私は長野朝日放送という地元放送局の担当になりました。
2006年。地デジ化に伴い『りんご丸』という新キャラクターが生まれた年でした。
そこで『りんご丸』を産み、広告業務も担当していたのが今のプロデューサーでした。
デザイン制作会社時代は社内に人が多いと言うこともあり、営業・制作の完全分業制でした。
当時、制作の私はクライアントに会うことはおろか、電話を受ける事もあまりありませんでした。
しかし営業担当が帰宅した後の電話のやり取りは私とプロデューサーの間で行われました。
やり取りが増えるうちに りんご丸グッズをいただいたり、電話で温かい声をかけていただいたりと、徐々に人と人とのやり取りになって来ました。
一番思い出に残っているのは、私が地元新聞社のキャラクターコンペに通った時に、着ぐるみ制作やグッズ提案の相談に乗っていただいた事でした。
放送局の人間ではない、つまりは部下でも後輩でもない私に 真摯にアドバイスしてくれました。
独立後も色々と心配し、気にかけてくれていました。
忙しい彼はメールも殆どしません。その彼がメールで気が重いと言っている。
いてもたってもいられない。心底心配でした。

番組『八ヶ岳 母なる峰と神秘の森』のエンディングでは、ヤマネの身を案じて終わるというハッピーエンドではない終わり方をしています。
でも私は自然が美しく、常に動物もいて、楽しい所。それだけが山の魅力だとは思いません。
環境(天候も含む)に応じて動物がいない年がある、人災や天災もある。険しい一面も山の魅力だと思います。
ヤマネがいない年─。それもまた魅力ある山(自然)の要素だと思います。
だから全体としては "あるべき姿" を伝えるドキュメンタリーとして、とても良かったと思いました。
作品に対し『気が重い』『心残り』と思うのは、強い責任感の表れです。
彼のファンとしてこれからも応援しております。
届けクッキー!

2013年1月3日 アンドデザイン 関谷まゆみ